Berkeley & Chicago

アドヴァンストレーニング・レポート 2002年10〜11月

10月おわりから11月中旬にかけての2週間、バークレーとシカゴでフェルデンクライスメソッドのアドヴァンストレーニングに参加してきました。アメリカでのアドヴァンストレーニング参加は一昨年に続き2度目ですが、今回は幸運にも2つのトレーニングに連続的に参加することができ、仕事の上での大きな収穫と同時にたくさんの新しい友人を得ることができました。新しい土地に行くことによって自分の中からも新しいものが生まれる・・。最大の収穫は「希望」でしょうか。エネルギーをたくさんもらって帰ってきました。

バークレー(Berkeley)

かぼちゃ

バークレーはサンフランシスコのとなりで、カリフォルニア大学バークレー校があるところとして知られています。また、アメリカ国内でも最もリベラル度が高い場所でもあります。アメリカは今、戦争に向かって突っ走っているようですが、あの大統領がひきいるタカ派の国という印象とは正反対のものがここにはあります。

そういう自由な雰囲気とフェルデンクライスとはピッタリとマッチしているように思えます。もともとカリフォルニアだけで全米のプラクティショナーの大半を占めているのですが、そのなかでもサンフランシスコ周辺の地域には特に多いのです。

私が参加したアドヴァンストレーニングはFeldenkrais Resourcesによって企画運営されたものですが、この会社はフェルデンクライス関連の本やオーディオテープ、ビデオテープ、グッズの制作や販売と、FPTPはじめ各種ワークショップを主催しています。カタログやホームページを通して本やテープを購入した経験のある方もいらっしゃるかと思います。

今回のアドヴァンストレーニングの情報はウェブサイトから得たものですが、講師がエリザベス・ベリンジャー(Elizabeth Beringer)だったのが参加しようと決意した主な理由でした。エリザベスにはニューヨークでのトレーニング2年目研修中に4週間の指導を受けたことがあり、とても強く印象に残っていました。キレの良い、明晰な指導は、トレーニングの中心指導者だったラッセル・デルマン(Russel Delman)のゆったりと心地よく、親密感を喚起させられ時には瞑想的とも言える指導とは際だった対象を見せていました。(だからこそラッセルは彼女を呼んだのでしょうね)

エリザベスに久しぶりで会えるという大きな期待は、残念ながら直前に彼女のお父様が亡くなり、講師交替となったことで実現できなかったのですが、替わりにマーク・リース(Mark Reese)が登場したことによって、失望よりも期待が上回ることになりました。

マークはカリフォルニア南部のサンディエゴを根拠地にして活動していますが、豊富な経験を持ち、"Relaxercise"などの執筆、世界各地での指導者としての活躍などで有名です。4日間のアドヴァンストレーニングで一体マークはどのような指導をするのか。Feldenkrais Resourcesとはどのような所なのか。バークレーでの新しい経験に、期待が高まりました。

Felden ResourcesFeldenkrais Resourcesは2階建てのかなり大きな建物の1階部分の半分以上を占めています。トレーニングの会場は、外光が明るく差し込む気持ちの良い大きな部屋です。床はカーペット敷きで、キッチンもついているのでお茶をいれたり食事をすることもできるようになっています。この部屋の他に、FIレッスンなどのプライベイトワーク用の小さな部屋がいくつもあり、あとは広い事務所。平日は数人のスタッフが働いているそうです。

初めて会うマーク・リースは、めがねと地味な服装のせいか生真面目そうに見えましたが実際はすごくユーモアのある人。彼のキャリアは心理学からはじまっているのですが、わかりやすく丁寧な話し方で常に生徒の反応に敏感に対応する。動きを説明するときには時に自分で色んな動きを面白くやってみせたりする。とても楽しめる実践的な授業でした。
今回のテーマは「kneeling over the table」で、ひとつの姿勢でのFIレッスンを様々な状況や展開を研究しながら学んでいくプロセスが4日間進みました。

きっと知り合いに会うに違いない、と思っていたのですが、ニューヨークのトレーニングで一緒だった友だちに再会し、アシスタントトレーナーとして教えていたオリーナやマリーロランがカナダから来ていたので大はしゃぎして再会を喜びました。

はじめの計画では今回の旅行の行き先はバークレーだけだったのですが、11月7日から11日までシカゴでミア・シーガルのアドヴァンストレーニングがあるという情報があり、そちらにも参加することにしました。

ミアはフェルデンクライスの直系の教師のひとりですが、長い間モーシェと一緒に仕事をしていた経験を持つ優れた実践家&教師。なんといっても彼女を特別な存在たらしめているカリスマ性には昨年夏東京で開かれたアドヴァンストレーニングで接して良く知っています。バークレーのトレーニングから中3日、その間にミアのアドヴァンスの行われるシカゴへ移動すれば良いのです。こんなチャンスは滅多にない!行かなくっちゃ!!

シカゴ(Chicago)

サンフランシスコからシカゴまでの飛行時間は4時間。時差が2時間あるくらいなのだから、気候が違うのは当たり前のことです。ほんわか暖かかくて毎日カピーンと晴天だったバークレーと違いシカゴに到着したその日はすごく寒く、あわててマフラーをとり出して首に巻きました。手先や耳が寒さで痛い。なんて寒いんだろう!

シカゴでの宿泊先は、やはりミアのトレーニングに参加するマリーナというプラクティショナーの家でした。オヘア空港からシャトルバスで1時間ほど、そばにシカゴ大学があるハイドパークという区域にマリーナの家はあります。なんとか自力でたどり着いたのが夕方6時近く。初対面の私をマリーナと夫のサンダーが暖かく迎えてくれました。エプロンをしたサンダーは夕食の支度をしているところでした。

ショウガをたくさん入れた中華風の炒め物と日本米のご飯というのがサンダーの作ったその日のディナー。おいしい!日本人にとっては嬉しい味です。サンダーは人類学者、マリーナは言語療法士でヴォイストレーナー、そしてフェルデンクライス・プラクティショナー。それぞれが知識も体験も豊富で、素晴らしいひとたちだ。2人との会話はとても刺激的で楽しいものでした。彼らはエレンの頼みを快く聞いてわたしに宿を提供してくれました。ふたりの息子がそれぞれ東京とボストンに住んでいるため、彼らの家には空いているベッドがあったのです。
翌日がトレーニングの初日です。会場までは車で30分ほど。今度はマリーナという「保護者」がいるかららくちんらくちん。助手席に座ってシカゴ見物しながらの楽しい通学でした。

Center of North Parkミアのトレーニングが行われたのは空港近くにあるコミュニティセンターです。トレーニングの会場として使用された広いフローリングの部屋のほかに、体育館やミーティングルームがあり地域の住民に開放されています。建物の外に看板があり、Mia Segal Feldenkrais と書いてあるのにはちょっとビックリ。

このトレーニングをオーガナイズしたのはエレン・ソロウェイさんですが、全米(いや全世界?)から集まった60〜70人の参加者で会場の雰囲気は最高に盛り上がっていました。いろんなひとが来ていて面白いのがフェルデンクライスのトレーニングの特徴だけれども、今回もそれは同じ。経験豊富なプラクティショナーやアシスタント・トレーナーもいれば、卒業後1,2年の者もいる。バックグラウンドも住んでいるところも違う多様な集まりが皆熱心に自分のプロフェッションの向上目指してチャレンジした充実の5日間でした。

ミアはいつでもそうなのだと思うのですが、実際に会場に来る前に何を教えるか(レッスンの内容や1日の構成など)は全く考えていないように思えます。多分彼女自身も生徒と同じように「何を経験するのだろうか?」という期待を持ってそこに来るのでしょう。だから最初にやることは、期待で目を輝かせている参加者に向かって「さあ。何かどうにかしたいことがあるひとはどうぞ話してみなさい!」と投げかけて、(半分の生徒が手をあげたのだが)ひとりひとりと質問やアイディアのキャッチボールを始めるのです。そのなかから面白そうなものをいくつか取り出して、そこからレッスンが始まっていく。「今」やっていることが大事なんだ。「何をやっているか」が問題。ほかには何もなし。体験そのものを探求するエキサイティングな時間が毎日続き、参加者たちも次第にミアのペースに引きこまれていきました。この5日間の体験は参加者にとって大きなギフトとなったのは間違いないことでしょう。誰もがそれを確信していました。

Mia and LIndaトレーニング最終日には、フェルデンクライスメソッドの対象を動物に拡げたTタッチの創始者リンダ・テリントン(Linda Tellington)が1日参加しました。猫や犬、馬だけでなく、へびや鳥など様々な動物にFIレッスンをするのがTタッチです。彼女の仕事はとてもユニークで、活動はかなり良く知られています。モーシェのサンフランシスコ・トレーニングの出身者でミアにも学んだ彼女の来訪に皆大喜びしてミアとリンダを取り囲みました。わたしもちょっとミーハー気分になり、昼休みにリンダと会話。「お会いできてとても嬉しいです。」「日本から来たんですってねえ!日本にも毎年Tタッチのプラクティショナーが行っているのよ。」「日本に帰ったら、友人やフェルデンクライス・プラクティショナーたちに、リンダに会ったって言いますね。」

トレーニングが終わった翌日シカゴから帰国の途に着きました。形のないたくさんの収穫と一緒に・・・。

様々な体験をとおして自分自身が変わっていくこと。教える者としてその体験を生徒と共有すること。互いに相手の人生を豊かに出来る、人との出合い。フェルデンクライスを選んで本当に良かったと思いました。



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